生物として終わっている。

今日も歩いて近所のイオンモールへ買い物に行く。
食材を求めて。

毎年、投資で200万の利益により生活している中年の冴えないオッサン。
すでにセミリアタイア。
昭和遺産とも言える木造モルタルアパート2階建ての1階で気ままな独り暮らし。
高校卒業後、東京の有名大学へ進学、卒業後、東証一部上場企業にも勤める。
毎日乗車率180%超の通勤、深夜残業、休日出勤の連続に疲れ、気付けばメンタルが疲弊、自殺寸前だった。
それでも長く会社勤めをしていたものだ。
無我夢中というよりかは、麻痺だろう。
ふっと気付いた時にはビルの屋上で宙ぶらりん状態。
なんとなく、冷たい突風で目が覚めた。
早々に退職届を提出、地元へと帰った。

田舎が嫌で東京へ飛び出したのにまた戻ってくるとは。
マイルドヤンキーの仲間入りかと思ったが、どうやら定義があるようだ。
地元の歴史や名物を愛する者ではなく、地元で家族や友人と長く楽しく暮らす者。
これに該当しない。
友人とは縁を切って東京に出たし、親とも関係は良くない。
地元に帰ったのは無駄に高い東京の家賃を払い続けるのがバカらしいのと便利だけど満員電車。
今でも満員電車を想像するだけで吐きそうになる。
さしたる理由はない。
土地勘があるのは地元だけだから。
屋根があり、雨が凌げれば良いという考えから、昭和バブル期に建てられティピカルな木造モルタルアパート2階建ての1階に居を構える。
2LDKの和室続き間。
色褪せ据えた匂いのする築45年アパートを気に入っている。
中年の冴えないオッサンにどこかぼんやりと親近感。

相変わらず今日も上階がうるさい。
子供が走り回る、母親が怒鳴る繰り返し。
男の声は聞いたことがない、母子家庭か。
令和になって数年が経った。
昭和なら家族4人が住んでいてもおかしくなかったアパート。
しかし平成で個室がなくプライバシーが一切保護されないこんなアパートに家族4人は不可能だ。
夫婦2人でも厳しい、いくら安くても学生にも嫌厭される。
行き場の無い高齢者か余程の赤貧、それとも後ろめたい事情が。

子供が泣いている。
母親が烈火のごとく怒った。
いつものことである。
母親のヒステリーは病的だ、そして毎日怒られても懲りない子供の異常性。
関わるな、理屈ではもうどうにもならない親子。
暴風雨が過ぎ去るまでイオンモールへ買い物。

道中の田んぼ。
田植えが終わり、稲が金色(こんじき)に輝く秋を待つ。
来年は……。

西日本最大級のイオンモールが3年前にオープン、田んぼ跡に。
このまちも随分と便利になった。
イオンモールを中心に元からある鉄道路線に駅を新設、道路整備、シャトルバス運行、マンションの乱立。
農家は喜んで財テクに走った。
悪いことではない。
農家の高齢化、後継ぎ問題、何より食っていけない。
田園風景を守るために反対だと主張する者はあまりにも無責任、現実を見ていない。

オシャレな店員が接客する1階ファッションフロア、400mのモールを通り抜け、食品売場へ。
中年の冴えないオッサンには関係のない世界。
ヨレヨレTシャツを着て、平日の昼間にふらふらしているのだから誰も相手にしない。
主婦か高齢者しかいない食品売場で、働き盛りの中年がキャベツを選別している奇妙な光景。
精肉コーナーで覇気の無いで豚バラ肉200g注文、店員は何も言わずに220gを袋詰め。
肉屋のあるあるだ。

会計を済ませ、2階のいつものカフェで昼食、たいして上手くもない日替わりランチを食べる日課。
週の半分は出勤している20歳前後の小柄な可愛らしい女性店員、学生かフリーターか分からない。
もはや若い女性に恋をすることも無く枯れている。
他の客は若い主婦のグループが幼稚園の話をしている。
もれなく大学まで付いてくる幼稚園で安泰ね、と何が安泰なのか分からない会話だった。
食後に紅茶が運ばれてくる。
先程の女性店員。
目を合わせないで紅茶を受け取る。
笑顔でありがとうと受け取ったところで何も起こらない。

そろそろ上階が静かになっている頃だ、アパートに帰ろう。
特にやること。
パソコンの電源を付け、つまらない動画を垂れ流す。
夕方に、簡単な炒め物を作って食べて、しばらくして寝る。
朝になって上階がうるさくなり、ほこりが舞う。
逃げ出すようにイオンモールへ。
これの繰り返しが生活スタイル。
面白くもなんともない人生。
収入は自動的に年間200万が入ってくる。
しかし贅沢できるほどの余裕は無い。
別に贅沢する理由ってあるのか、そんなに金って要らなくないか。
欲しいものを追い求め、がむしゃらに働く人を否定しない。
ただ欲望を追求するにも、疲れる。
あれが欲しいと考えるだけで面倒。
金で買えるものなんか価値が無く、たかが知れている。
腹を満たすだけの買い物が、唯一生きるためだけの行動。
これの繰り返し。
意味は、あるのだろうか。
あらゆるものが枯れ、活力が生まれない。
自分は終わっている、人間や人生としてではなく。

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